今回は薬剤師の代表的な参考書である今日の治療薬を参考に書いてみます。
今日の治療薬は2020年度版から「薬の作用機序の図解」を詳しく載せており、
一層薬の作用をイメージしやすい内容となっております。
抗ヒスタミン薬については、作用機序について、薬剤師の方、薬学生の方はかなり詳しいことかと思います。
せっかくなので今回は、薬学的な分野を深堀して、薬学時代のことを思い出しつつ、
書いていこうと思います。それではどうぞ。
ヒスタミン受容体
まずは、ヒスタミン受容体そのものについて、薬学部時代の復習です。
ヒスタミン受容体はH1~H4の4種類が知られています。
H1~H4いずれも7回膜貫通型受容体(GPCR)と言われます。
7回細胞膜を貫通しているのでそう呼ばれます。
H1受容体はGq/11タンパクを介してホスホリパーゼCと共役します。
※細胞表面におけるレセプターの種類を確認しておきましょう
イオンチャネル共役型レセプター
チロシンキナーゼ共役型レセプター
3量体GTP結合タンパク質(Gタンパク質)共役型レセプター
H1受容体は内皮細胞からのNO、PGI2など血管弛緩因子の放出を行います。
また、血管透過性(タンパク質などの高分子物質が通過する)の亢進、
気管支平滑筋の収縮、消化管の収縮などの作用があります。
H2受容体はGsタンパク質と共役しアデニル酸シクラーゼを活性化しcAMPを
生成します。cAMPはATPから合成されるセカンドメッセンジャーです。
cAMPを介した胃壁細胞の形態変化を伴う胃酸分泌が起こります。
H3受容体は中枢ヒスタミン神経のシナプス前部にあり、
ヒスタミンの遊離を調節する自己受容体として見出されました。
✅一般的に抗ヒスタミン薬はH1受容体拮抗薬のことを指します。
✅H2受容体拮抗薬は消化性潰瘍治療薬として用いられます。
それではH1受容体拮抗薬の薬理作用をみていきましょう。
H1受容体拮抗薬の薬理作用
H1受容体拮抗薬はその名のとおり、標的細胞のH1受容体にヒスタミンが結合するのを阻止し、ヒスタミンを抑制する作用があります。
近年では、インバースアゴニストとしての作用も知られています。
インバースアゴニストは、受容体に結合し構成的活性(アゴニスト非存在下での活性化状態)を減弱させる物質のことです。ヒスタミン(アゴニスト)非存在下でも活性化しているヒスタミン受容体の活動を抑制するのです。
ここで、第1世代、第2世代の違いをみていきましょう。
第1世代抗ヒスタミン薬は、セロトニン、ブラジキニンなどに対する拮抗作用をもつものもあります。セロトニンは 脳内の神経伝達物質のひとつで、ドパミン・ノルアドレナリンを制御し精神を安定させる働きをします。ブラジキニンはノナペプチド(9個のアミノ酸が連なる分子)であり、血圧降下作用を持つ物質のことです。
アレルギーとは関係のない物質に拮抗作用があることがわかります。
第2世代抗ヒスタミン薬は、マスト細胞からのヒスタミン、CysLTsなどのメディエーター遊離抑制作用、リンパ球におけるサイトサイン産生抑制作用など、様々な抗アレルギー作用があります。
適応症
蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、皮膚搔痒症。気管支喘息や、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、花粉症、アトピー性咳嗽など様々に適応症があります。
抗ヒスタミン薬は鼻炎症状のうち、くしゃみ、鼻水、かゆみには有効ですが、鼻閉にはいまひとつ効果が低いです。鼻閉にはLT受容体拮抗薬が有効です。抗ヒスタミン薬はほかにも、アナフィラキシーや、上気道炎、動揺病(プロメタジン:ヒベルナ等が抗悪心・嘔吐作用が強い)、メニエール症候群(ジメンヒドリナート)、パーキンソン(プロメタジン)病などにも使用されます。
抗ヒスタミン薬の使い方
第一世代抗ヒスタミン薬は眠気が強いので、運転手などには使用しません。アレルギー性鼻炎(花粉症)のクシャミ、鼻水に対しては即効性がありますが、鼻閉には効果がありません。抗コリン作用のある第一世代抗ヒスタミン薬は緑内障や前立腺肥大などの患者には禁忌です。
第二世代抗ヒスタミン薬は第一世代と比較すると眠気も少なく鼻閉にもやや有効です。緑内障や前立腺肥大の患者にもメキタジン以外は全て使用できます。
特発性蕁麻疹では、主に第二世代抗ヒスタミン薬を使用します。
蕁麻疹患者の約70%では誘因が明らかではない特発性蕁麻疹と言われ、毎日自発的に症状があらわれます。発症して1ヵ月以内のものを急性蕁麻疹、1ヵ月以上持続するものを慢性蕁麻疹といいます。
急性型では抗ヒスタミン薬により皮疹をおさめた後、数日~1週間予防的投与を行い、その後、漸減・中止します。慢性型では継続的な投与により症状の出現を予防します。抗ヒスタミン薬は蕁麻疹と同じ機序による血管浮腫には有効ですが、遺伝的血管性譜浮腫(HAE)や、ACE阻害薬による血管性浮腫には効果は期待できません。血管性浮腫のうち、生まれつき、体内にあるタンパク質のC1インヒビターの量が少なかったり、働きが弱かったりすることが原因の浮腫をHAEといいます。
副作用
第一世代抗ヒスタミン薬は、先述したとおり、ヒスタミン以外の物質の受容体にも拮抗しています。中枢神経系をはじめ、抗コリン作用、消化器系の副作用が一般的です。
中枢神経系の副作用としては、鎮静作用、眠気、めまい、倦怠感、興奮作用、痙攣、認知機能障害などがあり、抗コリン作用による副作用には、口渇、粘膜感想感、視調節障害、尿閉、便秘、頻脈などがあります。消化器系の副作用には、悪心、嘔吐、下痢、食欲不振、上腹部痛があります。シプロへプタジン(ペリアクチン)は抗セロトニン作用による食欲亢進作用があり、体重を増加させます。
第二世代抗ヒスタミン薬、特に非鎮静性の薬剤は血液脳関門(BBB)を通過しにくいため、第一世代に比べてはるかに中枢神経系の服用が少なく、抗コリン作用も少なくなっております。BBBは薬物の血中から脳内への移行を制限する機能のことをいいます。アミノ酸やグルコースなどのエネルギー源は脳内に選択的に輸送されますが、多くの物質は脳内に自由に入るわけではありません。密着結合と、グリア細胞により形成されていて、水溶性の高い物質あるいはタンパク質などの大きな分子はこの関門を透過し難いですが、多くのトランスポーターによって、必要な栄養素などは選択的に血液脳関門を透過します。また、P糖タンパク質などの排泄トランスポーターが、毒物・薬物を血中へ戻すことにより脳内への侵入を妨げていることが知られています。
特定の患者集団への投与
妊婦にはセチリジン(ジルテック)、レボセチリジン(ザイザル)、ロラタジン(クラリチン)が、授乳婦にはフェキソフェナジン(アレグラ)、セチリジン、レボセチリジン、ロラタジンの使用が推奨されています。例えばロラタジンなら(妊:豪B1、授乳L1) Mother's Milk評価基準、豪州ADEC基準などで、危険度が低いものを指します。
小児には、眠気、インペアード・パフォーマンス(作業効率が低下してるが、意識できない状態)痙攣の懸念の少ない非鎮静性第二世代抗ヒスタミン薬(脳内H1受容体占拠率が低い)の使用が望ましいとされています。また、小児では抗ヒスタミン薬により痙攣が誘発されやすくなっております。2歳未満の乳幼児にはフェキソフェナジン、レボセチリジンは使用可能です。プロメタジンは呼吸抑制作用があるため、禁忌です。
発熱性疾患中は熱性けいれんの持続時間を長くする可能性があり、抗ヒスタミン薬の投与は推奨されません。
学童期の小児に投与する場合、インペアード・パフォーマンス(作業効率が低下してるが、意識できない状態)や痙攣の懸念の少ない非鎮静性第二世代抗ヒスタミン薬(脳内H1受容体占拠率が低い)フェキソフェナジン、エピナスチン、レボセチリジンなどを選択することが望ましいです。
高度の腎障害(Ccr<10mL/分)にはセチリジン、レボセチリジンは禁忌です。
肝障害では多くの薬物が慎重投与です。
最後に
いかがだったでしょうか。
第1世代と第2世代で副作用については随分違いがありますがそのポイントは
BBBを通過しやすいか否か
どのような物質の受容体に拮抗するか
ですね。
今回、大学時代の薬理や生化学の授業の復習もできて満足してますが、
楽しくなってもっともっとやりたくなりました。
やっぱり薬好きなんだなあ( ´艸`)
リクエストなどあればコメントくださいね♬
ここが変だよ(;´・ω・)てのもあったらこっそり教えてください💦
それでは今日はこの辺で。
読んでくださりありがとうございました!!!!
参考文献:
薬学用語解説