「アナフィラキシーショック」は
死に至る事例も発生しておりますので、注意が必要なアレルギーです。
1、実際にどんな事故が起こったのか、
2、対処する方法、
3、学校ではどんな対応がとられているのか
みていきましょう!!
実際に起こった死亡例
2012年末東京都の小学校にて
とある女の子が給食のおかわりをした時、
担任の先生が食べられない食材が記入された一覧表を確認しないまま、
チーズ入りのチヂミを渡してしまいました。
食後に気分が悪くなり、症状が悪化。
校長先生がエピペンを注射しました。
その後、救急車で病院に搬送されましたが、心肺停止になり
女の子は亡くなられてしまいました。
生徒のアレルギーの一覧表を確認してさえいれば、
防ぐことができたかもしれない、とても悲しいできごとですね。
学校給食での誤食事故は他にもあります。
2014年秋田市立の小学校。
給食のキーマカレーを食べた小学2~3年の児童3人が、
顔面紅潮やせきなどのアレルギー症状を起こし、
うち2人は病院に運ばれました。
3人はいずれも牛乳アレルギーがあり、
1名は持参していた抗アレルギー剤を服用し、
2名はエピペンを教師が注射して対応しました。
職員が誤ってキーマカレーに予定のなかった
スキムミルクを使用したことが原因となりました。
アナフィラキシー
急性のアレルギー反応
短時間で全身に広がる
異物への過剰な免疫反応
アナフィラキシーとは、急激に体中に広がるアレルギー反応です。
アレルギーの原因物質(アレルゲン)を摂取した際、
短い時間に全身にあらわれる激しい急性のアレルギー反応のことをいいます。
子供のアナフィラキシーの原因のほとんどは食物です。
アレルギーの検査を行い、原因となる食べ物を避けることで、
アナフィラキシーを避けることはできます。
しかし例にある死亡事故のように、
情報共有がしっかりできていないと、
保育所や学校などで、アナフィラキシーが起こってしまうことがあります。
アナフィラキシーがあらわれたときに医師の治療を受けるまでの間、
ショックを防ぐための補助治療剤があります。
それがエピペン®と言われます。
エピペンの作用機序
ここでは少し薬剤師目線で、エピペンの作用機序についてみて行きましょう。
ここの情報は、添付文書やIFを基にしておりますので、
詳しくはそちらをご覧くださいませ。
◇作用部位・作用機序
エピペンは、副腎髄質ホルモンである「アドレナリン」を含有しており、
交感神経のα、β受容体に作用します。
それぞれの受容体のはたらきをみていきましょう。
1)循環器系に対する作用 (強心+血圧上昇)
心臓においては、β1 作用により、心拍数を増加させ、心筋の収縮力を強め、心拍出量を
増大し、強心作用をあらわします。
血管に対しては、収縮+拡張作用の両方をあらわし、心臓の冠動脈を拡張し(β2 作用)、
皮膚毛細血管を収縮させ(α1 作用)末梢抵抗を増加させて血圧を上昇させます。
2)血管以外の平滑筋に対する作用(気管支弛緩)
気管支筋に対して弛緩作用(β2 作用)をあらわし、気管支を拡張させて呼吸量を増加させ
る。これによって呼吸困難を回避することができます。
エピペンは、アナフィラキシーがあらわれたときに使用し、
医師の治療を受けるまでの間、症状の進行を一時的に緩和し、
ショックを防ぐための補助治療剤です。
あくまでも補助治療剤なので、
アナフィラキシーを根本的に治療するものではありません。
エピペン注射後は直ちに医師による診療を受ける必要があります。
食物によるアナフィラキシー発現から心停止までの時間は
わずか30分と報告されています。
アドレナリン自己注射薬を処方するときには相互禁忌薬剤に注意し、
使用するタイミングと方法を十分に指導します。
相互禁忌薬剤にはイソプロテレノール等のカテコールアミン製剤、
アドレナリン作動薬、プロタノール等があります。
これらの薬剤のβ刺激作用により、交感神経興奮作用が増強すると考えられています。
現在服用している薬がある方は、併用しても問題ないか、
処方医や、担当の薬剤師に事前に確認するようにしましょう。
また、原則禁忌の項目には次のように記載があります。
投薬する薬剤師は鑑査時に必ず確認しておきましょう。
次の患者には投与しないことを原則とするが、ショック等生命の危機に直面しており、緊急時に用いる場合にはこの限りではない
*当然、ショックなどの生命の危機に直面している場合は
他に選択肢がない時には、使用せざるを得ません。
1、本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
エピペンを使用した際に、何らかの過敏症が現れた患者には禁忌です。
自覚症状には、発熱、ふらふら感、しびれ、呼吸困難、かゆみ、発疹、紅潮、眼や口の周囲の腫れ、発汗、意識障害などの症状があります。
2、交感神経作動薬に対し過敏な反応を示す患者
3、動脈硬化症の患者
血管収縮作用があり、色んな閉塞が出る可能性を勘案してます。
4、甲状腺機能亢進症の患者
5、糖尿病の患者
6、心室性頻拍等の重症不整脈のある患者
7、精神神経症の患者
8、コカイン中毒の患者
むしろコカイン中毒の方でエピペン使う状況ってあるのでしょうか。。
9、投与量が0.01mg/kgを超える患者
(0.15mg製剤については15kg未満、0.3mg製剤については30kg未満の患者)
過量投与になるので、通常のアドレナリン注射液を用いて治療する。
小児に関しては、必ず体重を確認の上、薬歴にも記載しておきましょう。
患者本人以外が投与する場合
学校での注射は教師など、場合によっては本人以外が使用することが多くなると思います。注射時に投与部位が動くと、注射部位を損傷したり、針が曲がって抜けなくなったりするおそれがあるので、投与部位をしっかり押さえるなど注意してください。
エピペンの誤使用の例としては、安全コックを外した後にいじっていて指にさしてしまったり、投与時に逆さに持ってしまい、指に針が刺さってしまった報告が数例あります。
くれぐれも持ち方に気をつけて、針が出てくる側には指などをあてがわないように気をつけてください。日本で、エピペンを使用して生命にかかわるような事故が発生した報告はありません。
学校で食物アレルギーをどう防ぐか
アレルギー疾患を有する児童生徒が多くの時間を過ごす学校で、
安全に、安心して学校生活を送ることができる環境作りをめざして、
「学校生活管理指導表」や「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」を用いた取り組みが勧められています。
学校・幼稚園、保育所生活において何らかの配慮が必要な食物アレルギー児は、「学校生活管理指導表」、「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」を提出します。アレルギーをもった児童を診た医師が、現場でのアレルギー対応に必要な情報を記入し、保護者を通じて学校や園に提出されます。表をもとに、学校や園が情報を共有するのです。これを用いて、教職員全員の危機意識の共有、緊急時に備えた体制の整備などを行います。
また、給食における対応は安全性の確保を最優先とします。
このため、家庭で行う必要最小限の除去とは異なり、完全除去か解除かの二者択一による給食提供が推奨されています。
【必要最小限の除去】
①食べると症状が誘発される食物だけを除去すること
②原因食物でも、症状が誘発されない「食べられる範囲」までは食べることが可能
【完全除去】
①少量で食物経口負荷試験を行った時に症状が出た場合には完全に除去する。
②少量とは、卵なら加熱した卵黄1個、牛乳なら3mlを言う。
最後に
いかがだったでしょうか。
アレルギーは人によっては命にもかかわることです。
大事なのは、情報をしっかり共有して、「知らなかった」ことや「伝え漏れ」による事故を防ぐこと🍀
エピペンの正しい使い方を、身近な人がしっかりわかっておいて、アナフィラキシーが万が一現れた時にすぐに使用できる体制を作っておくことですね🍀
最後までご覧いただきありがとうございました🐈